みなさんこんにちは & はじめまして。
さて今回は、前回のデザイン寄りな話とは変わって、テキスト作りにかかわるようなお話をしたいと思います。
前回のおさらいですが、
- ロゴはショップ運営の中で徐々にブラッシュアップする柔軟さも大事。
- ロゴには「きちんとショップ・ブランド名が伝わるか?」など注意すべき点がある。
- 「6:3:1の規則」で3色を綿密にセレクトし、背景色は安易に変更しないこと。
といった内容でお届けしました。
さて今回は「キャッチコピーの考え方」です。
これまで、キャッチコピーづくりに取り組んだ経験のない方で、1度ためしにやってみようと思った方は、特にじっくり読んで頂きたい内容です。
ネットショップをOPENした後でもある程度なら変更も容易です。
お店の飾りを増やすつもりで、ラフな姿勢で取り組んでみるのもいいでしょう。
前回のロゴデザインとはまた違った角度で、ショップの特徴をアピールするための「言葉づくり」をする・・・そういった考え方がベストです。
ではでは、キャッチコピーの上手な考え方について、お話をしていきましょう。
POINT 1:キャッチコピーは、ショップの運営方針やデザインをブレさせない「指針」になる
キャッチコピーと聞くと、いわゆる化粧品CMで聞くような・・・ヒネリやスパイスの効いた、アイディア満載のものをイメージするのではないでしょうか。
確かに、それくらい洗練された言葉選びができるのであれば、もうなにも申し分ないのですが(汗
ここでのブランディング基礎構築で、まず行うべきキャッチコピー考案は、そこまで崇高なものではなくても構いません。
なにはともあれ「ショップの商売コンセプトを、端的に表すもの」であれば、まずは一歩前進なのです。
例えば、以下の様なネットショップがあるとしましょう。
SAMPLE
・ショップ名は「JOURNEY MART」
・ネットショップをOPENして、約半年くらい。
・オーナーが仕入れた外国の小物雑貨を販売。
・在庫数はそう多くないが、情緒あるアイテムをセレクト。
・北欧家具も少数だが販売している。
・商品単価は主に2,000円~8,000円あたり。
・一部50,000円程度のアンティーク系アイテムもある。
・オーナーの仕入れはシーズン毎で年間4回程度。
・地元の輸入業者を通した安定的な仕入れもしている。
・ジャンルは北欧・アジア・インド・ジャマイカ・アフリカ・英国風など幅広くフォローしている。
・在住外国人とのコミュニティを活かし、海外雑貨のフリーマーケットを定期開催。
・・・まるで絵に描いたような設定ですが(汗
ともあれ、このショップがキャッチコピーを考案するとしたら、いったいどんなフレーズになるでしょうか。
参考も交えつつ、考えてみましょう。
POINT 2:キャッチコピー考案のための「30文字以内ルール」を駆使しよう
まず、キャッチコピーを考えるためには、「キャッチコピーは作文ではない」という点を念頭に置きましょう。
あくまでも、ひと目でスッと入り込んでくる端的なものではなくてはならないからです。
その「スッと入り込める文章量」を把握するために、まずは「30文字以内ルール」を設けることをお勧めします。
「30文字以内ルール」とは?・パンフレットなどの印刷物、バナー広告、HTMLページなど、比較的使い回しやすい文章量で制限を設ける。
・制限があることで、「必ず入れる言葉」「入れなくても良い言葉」の取捨選択がしやすくなる。
・30文字であれば基本的に文章中で折り返すことが少ない。そのため比較的読みやすい一文に仕上がる。
・記号を用いる場合も、その記号一つで「1文字」にカウントするよう徹底することで、言葉選びでシビアになれる。
ちなみにですが、上記の「キャッチコピー考案のための「30文字以内ルール」を駆使しよう」のタイトルが丁度30文字でした。
どうでしょう・・・比較的読みやすくはなかったですか?w
POINT 3:特徴や個性、オーナーのこだわりの中から、伝えたい言葉を選びましょう
上記の30文字以内ルールがあるからといって、いつまでもアイディアが降ってくるのを待っていてはいけません。
徐々に言葉を拾いだして、あれこれと整理し、組み立てていく作業が必要です。
まずは、特に個数の条件は設けなくてもいいので、「この言葉は大事!」と思えるものを直感で抜き出していきます。
ここでは、先ほどの雑貨屋さんの設定を用いて、実際にやってみましょう。
SAMPLE北欧、 世界、 セレクト、 あんしん価格、 オーナーが仕入れ、 小物雑貨、 アンティーク、 いろんなジャンルをフォロー、 ジャーニーマート、 アジア、 インド、 ジャマイカ、 英国、 シーズンごとに新入荷、 家具もあるよ、 直接輸入、 少数仕入れ
さて、これだけではちょっと足りません。
これだけだと、お店の看板を飾るキャッチコピーというよりは、まさに「SEO対策」っぽい言葉選びに見えますね。
もう少しだけ、「仕入れ・販売の時にこだわっていること、想い」など、個性が感じられるような言葉を足していきます。
SAMPLE北欧、 世界、 セレクト、 あんしん価格、 オーナーが仕入れ、 小物雑貨、 アンティーク、 いろんなジャンルをフォロー、 ジャーニーマート、 アジア、 インド、 ジャマイカ、 英国、 シーズンごとに新入荷、 家具もあるよ、 直接輸入、 少数仕入れ、手作り感あふれるものをセレクト、 ここでしか買えないものを届けたい、 お土産を持ち帰るワクワク感を提供、 お客様の代わりに旅してる、 香りや雰囲気ごと送りたい、 このお店で世界旅行してください
ここまでで重要な事は、「キーワードを出せるだけ、出しきる」ということです。
もうこれ以上は出ない!・・・と感じられるギリギリのところまで、頑張って出しましょう。
さて、キーワードを出し切ったら、今度は気持ちを切り替えて、「そぎ落とす」作業を行います。
POINT 4:客観的な価値観「第三者の視点」で、キーワードを斬る!
考え抜いたものも、そうでないものも、言葉を出せるだけ出したら次のステップです。
ユーザー目線であったり、経営者ではないスタッフ目線であったり・・・ともあれ、自分自身以外の立ち位置と価値観をイメージしてください。
ここから、さっきまで懸命に紡ぎ出したキーワードたちを“斬っていく作業”に入ります。
斬っていく場合、以下のようなポイントを意識してみましょう。
- 自分がアピールしたいポイント(価格 or コンセプトなど)から遠いキーワード
- キャッチコピーに入れなくても、他の箇所(店舗紹介や各種商品)で伝えられるキーワード
- 他社競合などと比べて、これといって特性・個性があるわけではないキーワード
- いまいち伝えにくい・伝わりにくいように感じるキーワード(直感で判断か、もしくは店舗スタッフなどに感想を聞いてみると良し)
では、上記ポイントにを意識して、試しにキーワードを斬ってみます。
SAMPLE北欧、 世界、 セレクト、 あんしん価格、 オーナーが仕入れ、 小物雑貨、 アンティーク、 いろんなジャンルをフォロー、 ジャーニーマート、 アジア、 インド、 ジャマイカ、 英国、 シーズンごとに新入荷、 家具もあるよ、 直接輸入、 少数仕入れ、手作り感あふれるものをセレクト、 ここでしか買えないものを届けたい、 お土産を持ち帰るワクワク感を提供、 お客様の代わりに旅してる、 香りや雰囲気ごと送りたい、 このお店で世界旅行してください
だいぶん斬っていきましたが・・・
例えば「北欧」「アジア」「インド」「英国」など、地域を特定するキーワードよりも、「世界」などのキーワードの方が、ワールドワイドな感じがしてネットショップのアピールになるかもしれません。なのでバッサリと切ってみました。
ほか、「あんしん価格」などは、よくよく思えば「じゃあ、どのあたりの価格帯が安心なの?」という、そもそも論に悩む言葉でもありますので、切っています。「別に価格帯で勝負しているのではない」という想いもありますし。
ほか、ショップ名は他のどの場所でも、いくらでも記載してアピールできるので切っています。
「お客様の代わりに旅してる」なども切っていますね。こだわりが強すぎてか、少し押し付けがましい印象があります。
「少数仕入れ」も同様です、客観的に見たら・・・“少数”って、あんまり強くアピールする事でもない気がしますね(汗
このように、「第三者の視点」を意識しつつ、いまいち反応しにくそうなキーワードを削っていく作業は、キャッチコピーを作る際に大切です。
いちばん大切で、ショップの良さをしっかり押さえているキーワードを抽出してこそ、より素敵なキャッチコピー考案につながります。
POINT 5:キーワードを組み立てて、幾つかのキャッチコピー候補を出しましょう
今度は、下記の残ったキーワードを使って、幾つかのキャッチコピー候補を書き出していきましょう。
SAMPLE世界、 オーナーが仕入れ、 アンティーク、 いろんなジャンルをフォロー、 直接輸入、 手作り感あふれるものをセレクト、 お土産を持ち帰るワクワク感を提供、 香りや雰囲気ごと送りたい
さて、ここで必要な事ですが、まず最初にも触れた通り、「SEO対策とは一旦、思考を切り離して考える」ことに注意してください。
いわゆるMETAタグ・ディスクプリション(description)などとキャッチコピーは、別の用途・別の基準でそれぞれ成り立っています。
うまく言葉を選べば、両立できない事も無いのでしょうが、そう簡単なことではありませんね。
キャッチコピーは、機能性よりも、
ショップの運営方針やデザインをブレさせない「指針」でもある
ということが重要です。
では、幾つかキーワードを組み立てて、ボツ or 採用関わりなくリストアップしてみましょう。
可能な限り候補を出すことが大切です。
- いつでも買える、旅できる、ワクワク世界旅行のお店。
- 世界中の香りや空気をお届けします。
- アンティークも、ご当地雑貨も、いろんなジャンルの雑貨を販売。
- 旅人オーナーが、世界中を歩いて仕入れ、お届けします。
- 世界とあなたをつなげる、直接輸入のお店。
- 現地の雰囲気を感じる手作り雑貨、小物から家具までなんでもお届け。
・・・さて、これくらいのリストアップにしておきます。
ただし実際にやってみると、もっとたくさんのキャッチコピー候補が挙がってくるのではないかと思います。
個数に上限は付けなくても結構です。
出せる分だけ、リストアップしましょう。
POINT 6:言葉の感じ方、リズムを変える
今度は、少しだけ先のキャッチコピー候補に手を加えましょう。
言葉のリズム感や、見たり読んだりした時の印象をちょっとづつ意識して、言葉を「調理」していきます。
例えばですが、「痛い!」という言葉で考えてみましょう。
ひらがなにしたり、カタカナにしたりして「調理」してみてください。
- 痛い!
- いたい!
- イタい!
言葉というものは、同じ「痛い!」でも、それを発した場所・雰囲気によって、伝わる印象や程度が変わることがあります。
キャッチコピー考案の際、「痛い」なのか「いたい」なのか「イタい」なのか・・・印象を感じ取って、上手に活用したいものです。
上記の3つ、それぞれ以下のような印象が感じられませんか?
- 痛い! ・・・ 一般的な印象。病院っぽい感じ。注射など。本当に痛そう。
- いたい! ・・・ ちょっとだけ和らいだ痛み。チクっとした痛み。いたずら感のある痛み。許せそうな範囲の痛さ。
- イタい! ・・・ 肉体的な痛さより内面的な痛さ。自分の痛みじゃなく人の痛みに対しての表現。悪口・指摘。
・・・このあたりは、人によって感じ方が様々かもしれませんが、そういった様々な感じ方を受けて、言葉選びができたら良いですね。
そして、ひらがな化・カタカナ化という方法を試してみると、比較的簡単めに、その変化を工夫することが可能です。
では、先のキャッチコピー候補の幾つかを、カタカナ化・ひらがな化してみます。
- いつでも買える、旅できる、わくわく世界旅行のおみせ。
- セカイ中のカオリや空気をお届けします。
- 旅人オーナーが、セカイ中を歩いて仕入れ、おとどけけします。
- セカイとあなたをつなげる、直接輸入のおみせ。
どうでしょう。
全体的には、漢字表現の時よりも温かみ・柔らかさが増している候補もあるように思います。
ただ、例えば「香り」を「カオリ」にした箇所は、ちょっとだけ宜しくない印象を受けますね。
印象というより・・・「カオリさん」という人の名前っぽい雰囲気に変貌してしまっている・・・そんな印象を受けます。
「世界」を「セカイ」にした箇所はどうでしょうか。
伝わる意味はまぁまぁ一緒のように思いますし、「世界」という単語が地球儀っぽい印象から、やや冒険的で好奇心をあおるような印象の言葉に変わった気がします。
温かみ・柔らかさについては、自分自身のネットショップが、どういう雰囲気のお店なのかを考えながら調節しましょう。
重厚感・エッジ感あふれる「工具関係」であれば、あまり柔らかくする必要もありませんね。
ふわふわとした「寝具関係」であれば、安眠できそうなレベルの柔らかさを、ひらがな化を用いて演出してみるといいでしょう。
言葉は、発する場所・空気感によって、伝わる印象が異なる。
ここでは、言葉の印象を感じ取ること、そしてカタカナ化・ひらがな化を上手く活用すれば、上記のようにキャッチコピーのアイディアに繋げやすくなるという点を、ぜひ覚えておくとよいでしょう。
POINT 7:言葉の視点を変える
ここは少し高度な方法になりますが、「誰が発する言葉か」を意識して、キャッチコピーを操作してみるのも良いでしょう。
先ほど、カタカナ化・ひらがな化したキャッチコピー候補を、「ユーザーが発している言葉」のように変えてみましょう。
- いつでも買って、旅をする、おみせでわくわく世界旅行
- セカイ中の香りや空気がやってくる!
- セカイ中を歩いて仕入れるオーナーと、お買い物の旅に出よう
- セカイとわたしをつなげる輸入雑貨
「セカイ中の香りや空気がやってくる!」は、少し強引なカタチになってしまいましたね・・・。
ネットショップにとって、購入を促したいのはもちろん、サイトを閲覧しているユーザーの方々に他ならないでしょう。
その方々がもっとも共感しやすい言葉を見つけ出して、キャッチコピーにしたためる事ができれば最高なわけです。
その際、特に有効活用できるのが「ユーザー視点に言葉を変える」という方法です。
「ユーザー視点に言葉を変える」という方法は、それをシンプルに検討しやすくする方法の一つと言えます。
同じ購入仲間が「これ良かったよー、買ってみなよー」と、気軽に薦めてくるような心地良さで、スッと共感できるような言葉が、アイディア候補の中から出てきやすくなるのではないでしょうか。
ユーザー(購入者)の共感を得やすくするためには、「ユーザー視点の言葉」が大切。
さて次は、上記の候補の中からキャッチコピーを決定していきましょう。
POINT 8:ロゴとキャッチコピーをセットで見る
先の「言葉の視点を変える」まででも、ずいぶんとキャッチコピーを決めやすくなっているはずです。
あとは直感でワクワクするキャッチコピーを選んだり、スタッフの方々など第三者を交えて決めていくこともできるでしょう。
しかし、ここではもう一つポイントを加えることで、キャッチコピーづくりに徹底的にチャレンジしていきます。
以下のように「ロゴデザインと併せてみる」を実践してみると、よりリアリティのあるカタチで、キャッチコピーを客観的に眺めることができるようになります。
こうやってロゴと併せて眺めると・・・やや強引にユーザー視点に変えた、「候補2 セカイ中の香りや空気がやってくる!」も、さほど悪くはないように感じます。
が、勢いで押しきっているようなキャッチコピーですので・・・好みの問題で意見は別れるかもしれませんね(汗
「候補3 セカイ中を歩いて仕入れるオーナーと、お買い物の旅に出よう」はどうでしょうか?
キャッチコピーの文字数の長さもあってか、ちょっと直感で理解しにくい感じがしますね。
やや読みにくく、クドさがあるように思います。
「候補1 いつでも買って、旅をする、おみせでわくわく世界旅行」は、捨てがたい案ではありますが・・・実はひとつ懸念が残っています。
それは、ロゴと併せて見てみても、「何屋さん」なのかが直感で伝わってこないという印象を受ける点です。
そういう点では、「候補4 セカイとわたしをつなげる輸入雑貨」は、“輸入雑貨”という言葉が織り込んでありますので、候補1よりかは「何屋さん」なのかを感じ取りやすいように思います。
と、なると今回は・・・
これが、キャッチコピーの第一候補になりそうですね。
みなさんの候補は、どれでしたか?
まとめ
さて今回は、キャッチコピーの考え方について、けっこう深めに掘り下げてみました。
今回のまとめとして、以下のような事が言えるでしょう。
CHECK POINT!・キャッチコピーは、ショップの運営方針やデザインをブレさせない「指針」としても活かされる。
・読みやすく、直感で伝わるキャッチコピーを考えるために「30文字以内ルール」を設けよう。
・キャッチコピーのアイディアは出せるだけ出す。出した分だけ深く考えたアイディアが出せる。
・出したアイディアは、「客観的に見て斬っていく作業」を経ることで、洗練されたものが残る。
・キャッチコピー案は、言葉と言葉を組み合わせながら考えよう。
・言葉の感じ方、リズムを感じ取りながら、キャッチコピー案を考えよう。
・「ひらがな化・カタカナ化テクニック」を活用しよう。
・「ユーザー視点に言葉を変えるテクニック」を活用しよう。
・ロゴとキャッチコピーは、セットで見ていくと、候補を絞り込みやすい。
キャッチコピーについて考える・・・言葉を使ってブランディングしていく作業は、デザインの仕事のようにとても奥深いものです。
だからこそ、あまり力を注ぐことができない部分でもありますね。
ユーザーに直感的であったり、感情的だったりする要素を上手に伝えてファン化を促す際、言葉を上手に用いる方法を知っておいても、決して損はしないでしょう。
キャッチコピーを考えるプロセスには、そんな「ネットショップから発信する言葉を洗練するコツ」がたくさん詰まっているものと思います。
では、また次回、ブランディングについてのポイントやコツを掘り下げて行きましょう。
ではでは・・・。
次回は、「ネットショップ運営と、ブランディングとの関わり深い話」でお届けします。